『ゴルゴ13』シリーズは、約半世紀前の1968年に『ビッグコミック』(小学館)で連載が開始され、現在もなお連載中の劇画です。2017年現在、単行本(SPコミックス)が180巻を超えるというギネス級の超大作でもあり、まもなく連載開始50周年を迎えようとしています。

ゴルゴ13が、これだけ長く、広く支持されてきたのには様々な要因が考えられるでしょうが、最大の理由は、主人公であるゴルゴ13=デューク・東郷という人物の、生き方や行動にある、と私は思っています。

もとより彼は、殺人者であり、犯罪者です。現実世界においては決して許す事のできない存在と言ってよいでしょう。にもかかわらず、多くの人が共感するのは、殺人者としての彼にではなく、全くぶれない、その生き方に対してだと考えられます。ゴルゴ13は、いかなる既成の倫理観・価値観・イデオロギーにも影響を受けません。だからと言って、野放図に無軌道に生きているわけではなく、むしろ、徹底した自己管理とルール厳守の中で生きています。自己を磨き抜き、主体性を貫き、感情よりも規範を優先する彼の生き方は、自分以外に信頼できる確たる存在を見出し得ない、混迷する現代の世界や日本において、私たちはいかに生きていくべきかについて、実に多くの指標と示唆を与えているのです。

ゴルゴは、常に強い意志と誇りを持って毅然としています。そして、意外にも時として弱者へのいたわりや、優しい気持ちさえ持っています。その品格・風格は、時として、古武士に例えられることもありますが、私は近年の日本人が忘れつつある大切なもの、見失いつつある貴重なものが、ゴルゴの中に脈々と生きていると感じています。

ゴルゴは、世界を股にかけて活躍しています。彼が日本人か否かは謎ですが、少なくとも日本人の血を引いていることは間違いないようです。「ゴルゴ13」は、日本人が生み出した大河ドラマの傑作であり、得がたい「人生の教科書」であると確信しています。

50周年の佳節を控えて、今秋、読売新聞社と関西テレビ放送主催による大規模な特別展が開催されます。本展では、約半世紀もの長きにわたって未公開だった貴重な原画をたどりながら、ゴルゴの全軌跡を、狙撃・女性たち・依頼人・サバイバル術・人生哲学・世界史との関わり…等々の様々な角度からの分解・解析を行い、さらには舞台裏の制作過程や制作現場までをも可能な限り再現することを試みました。ゴルゴ・ファンはもとより、多くの人がゴルゴ13シリーズの奥深い魅力に触れることでしょう。私も、今から胸躍る思いで、開催の日を待ちわびています。その成功と、ひとりでも多くの方にご来場いただけるよう心より願う次第です。

ゴルゴ13研究家 杉森昌武氏

杉森昌武氏 PROFILE編集プロデューサー兼ゴルゴ13研究家

すぎもり・まさたけ。1959年・東京生まれ。『THEゴルゴ学』、『磯野家の謎』、『東スポ伝説』、『ビンボー漫画大系』、『古畑任三郎の研究』、『かってに改蔵・勝手に研究しやがれBOOK』、『マグル式<ハリー・ポッター>魔法の読み解き方』、『あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度』等々を世に送り出した20世紀最後のサブカル系カルト編集者。メイン研究テーマであるゴルゴ13においては、『THEゴルゴ学』企画編集総指揮の他に、『コンパクト版・ゴルゴ13』全話解説、『ゴルゴ13に学ぶ仕事術』、『日めくりカレンダー オレの仕事だ!ゴルゴ13』等の企画監修を務める。